子どもさんに関わっていてよく質問されることの1つに、『鉛筆が上手く使えなくて困っています』ということがあります。4歳、5歳の子どもさんが多いです。
『周りの子が上手に使えているのに』という思いもあれば、『他所で指摘されたので相談』ということもあります。
相談を受けると、実際にどのように鉛筆を使うのかを評価します。
今回は鉛筆の操作についてのお話をしていきます。
Contents
評価
どのように鉛筆を把持しているか。
指の使い方。
手首の使い方。
前腕の使い方。
肘の使い方。
肩の使い方。
肩甲帯の使い方。
そもそもどんな姿勢保持をしているのか。
目と手の協調は。
………。
沢山の見るべきポイントがあります。後述しますが、見るべきポイントは体幹です。
関節や筋肉をどう使っているか。どのように手を使って鉛筆をどう運ぶのか。それぞれの項目をチェックして難しい点をあぶり出していきます。
身体の発達の順番
身体は中枢から末梢へ発達していきます。体幹がしっかり使えると、肩甲帯が安定して肩が使えるようになります。肩が安定すると肘や前腕を使えるようになります。
指を機能的に使うためには前腕と手首の動きが重要になります。
ここで大事なのは、子どもさんの発達段階がどのレベルにあるか、ということ。
手首や指を使って上手にボールをキャッチできていますか?
肘や前腕を上手に使ってボールを投げることができていますか?
まずは大まかな動きからチェックしてみます。基礎になるのは体幹です。グラつかず姿勢保持ができるか、これは肩や肘の操作に影響します。次に大事なのは肘や前腕、手首の固定性です。これが上手く出来ていないと指を滑らかに使えません。
巧緻運動の発達
巧緻運動は練習しないと上手になりません。子どもはブロックやビーズなど遊びの中から学んで発達していきます。
発達障害をもつお子さんは中枢側の発達が十分ではなかったり、様々な理由によって巧緻運動の発達が遅れていることが多いです。
こちらにも巧緻運動のことを紹介しています。
握りの発達
鉛筆や箸の握りの発達について。
はじめの頃はグー握りで、ペン先が小指の方向に向いています。グルグルと殴り書きができるようになります。スプーンやフォークの持ち方も同じです。しかしスプーンを口に運ぶのに、この握り方では上手く扱えていないことがわかります。肩や肘を大きく動かすことによって操作しますので、細かいコントロールが効きません。微調整出来ない不器用さがある時期です。
手の扱い方が上手くなると、グー握りでもペン先を親指側に持ってきて手首を使えるようになります。これは鉛筆よりもスプーンで例えると分かりやすいです。同じグー握りでもスプーンの先が親指側にある方が操作しやすいと思います。スプーンの先が小指側にあると、口に運ぶのに肩肘を大きく動かすことになります。
更に手の扱い方が上手くなると、指を握りに参加させることができるようになります。指で支えることが出来るようになると、手全体でスプーンや鉛筆を握るときと比べて手首の動きが自由になります。手首を上手く扱えるようになると、肩肘に余計な力を入れなくて済みます。この頃にはスプーンで上手に食べることが出来たり、鉛筆での色塗りが上達していることが分かります。
次に、親指・人差し指・中指での3指握りが上達していきます。箸が使えるようになってきますが、初期では、箸で刺して食べることから始まります。スプーンやフォークは上手です。手首の固定と操作力が上達すると、小指側での固定力がついてきます。この小指側での固定力は3指の操作と関係しますので、かなり大事なポイントになります。鉛筆も少しずつ握りが上手くなっていきます。
手首と小指側での固定力が高まっていくと、3指の分離した動きが自由に出来るようになります。箸の開け閉めも上手になります。鉛筆も上手に持って、上手に円を書いたり直線を書いたり出来るようになっていきます。
上手に操作するためには
鉛筆、箸、スプーンなど、指の巧緻性を高めて操作力を上達させるには、身体の発達の順番を追いましょう。
まずは体幹の安定性を上げるトレーニングをします。体幹の安定性があることで上肢の運動性が保たれます。
続いて、肩甲帯、肩関節、肘関節、前腕、手関節まで安定性を高めていきましょう。粗大運動の発達は、中枢側から始まり抹消側に向けて進んでいきます。手関節まで安定してきたら、小指側の固定力が高まり、3指のトレーニングを始めていきます。
3指のトレーニング方法
母指と示指の対立、母指と中指の対立を鍛えます。
- 母指だけ、示指だけ、中指だけで粘土を机の上で伸ばしていく。
- 洗濯ばさみをピンチして、ボードに挟んでいく。
- ダンボールに爪楊枝を突き刺す。
などなど。3指を中心に使う動きがあれば何でも良いです。楽しくできる遊びを絡めて出来ると良いですね。
そして何より練習が大事。巧緻動作は練習しなければ上手くなりません。トレーニングも大事ですが、実践でどんどん使いましょう。
他にも似たような動きの遊びがあればどんどん促しましょう。
時間はかかりますが、少しずつ変化は現れてきます。周りの子と比べてプレッシャーを与えすぎないように、長い目でみてください。
書く練習
実践的にどのようにトレーニングするのか。
使いやすい鉛筆の長さと硬さを選びます。6Bが柔らかくて書きやすいです。
鉛筆の握りが難しい場合は、市販の握りの補助具を使ったり、輪ゴムを沢山巻いたり、硬めの粘土を巻いても良いです。3指でしっかり握れるように調整してあげてください。
きちっとした姿勢で、しっかり握りましょう。
肘と前腕は机につけておきます。浮かせると指先の操作よりも肩や肘での操作になってしまいます。さらに小指側の手を机につけておきます。これで手が安定しますので、指先の操作がしやすくなります。
例えば丸を書く場合、腕の操作で書くと雑な丸になってしまいます。指先の操作で書くと微調整が出来てキレイな丸が書けます。微調整するためには小指側を机につけて安定させておきましょう。
初めの内は書いている間に手を浮かせてしまいます。横から押さえてあげましょう。慣れてきたら離すようにしましょう。
反対側の手は紙を押さえるように、机におきます。それで姿勢が真っ直ぐになりやすいてす。
初めは、なぞり書きで指の使い方を学ばせます。少し難易度が上がりますが、迷路からはみ出さずに書くのも有効です。
楽しみながら、少しずつ書く練習をしていきましょう。初めは上手く書けないので、ヤキモキしてついつい叱ったり、手を出しすぎたり、多く練習させようとしますが、逆効果です。1回や2回の練習では上手くなりません、続けないと身につきません。続けるためには楽しくないといけません。楽しく継続して取り組みしていくなかで、少しずつ自信をつけていけるよう課題設定していきます。スモールステップです。
最後に
効果が出てくるのには時間がかかります。
長い目でゆっくりトレーニングしていきましょう。
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