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効率の良い運動、トランポリン
発達障害を持つ子、DCDの傾向にある子は、身体全体に低緊張の傾向が強く筋出力の調整がうまくいかないことが多いです。筋肉の張り具合が低く、どのくらい力を入れたら良いのかが分かりにくい、という状態です。
姿勢を保つための、筋肉に持続的な力を入れておくことが難しいこと。身体の前後のバランスが悪く、後側の筋肉ばかり使って姿勢保持すること。腹筋を使って姿勢調整することが難しい。など、身体のバランスを保ちながら動くことがとても苦手です。
発達性協調運動障害(DCD)において、低緊張はその原因の一つとして考えられます。
これらが、いわゆる『姿勢の悪さ』に繋がると考えます。
椅子に座っても姿勢が崩れてしまいやすく、まっすぐ座れない、肘をついてしまう、片膝が上がってくる、後ろにもたれてしまう、など次々と姿勢が崩れていきます。
立っていても姿勢を保てず、じっとしていられない、フラフラと動いてしまう、何かモジモジしている、などの特徴があります。
そのような特性をもつ子には、トランポリンの効果が大きいです。そしてトランポリンはとても効率的な運動です。
跳躍・着地を繰り返すことで縦方向への加速が入力されます。それに対して、目や頭の動きも含めた筋緊張を自動的に調整していきます。
- 頭を一定の位置に保つための筋肉の働きをだすこと。
- 身体が反り返らないように腹筋を働かせて固定させること。
これができると、足の力を上手く使って上手にトランポリンを跳べるようになります。
縦方向への加速を感じるのは前庭覚。前庭に刺激が加わると、その刺激に対して身体をコントロールしようと筋緊張を変化させていきます。前庭覚でとても重要な機能であり、ここが弱い発達障害を持つ子どもはDCDのような不器用さに繋がっていると考えます。前庭覚は運動の土台となる感覚であり、乳幼児の運動発達に沿って育てていく必要があります。
そして土台の上に乗るのが固有感覚。筋肉や関節にどの位の力が入っているかを検知する感覚。力の強弱やタイミングを図る際にとても重要な感覚であり、これも不器用さに繋がるため前庭覚と同時に育てていく必要があります。
低緊張で姿勢保持が難しい子は体幹や頸部の保持が苦手である場合が多いです。実際にトランポリンを跳んでもらうとグラグラして姿勢を保てないことが多いか、連続して跳ぶことが難しいケースもある。
トランポリンを跳ぶことによって緊張を高めて姿勢保持してもらいやすくなる。一時的ではありますが効果があります。
トランポリンがうまく跳べる条件の一つにバランスをとることがあげられます。頭をコントロール出来ているということです。首の筋肉を使って、固定させたりバランスを取るように微妙な動きを出したり、首でコントロールをつけている、ということです。
もう一つは足の力。足では膝折れしないように大腿四頭筋や下腿三頭筋などで踏ん張る力を出しつつ、足首で飛ぶ方向を微調整します。重心移動をコントロールします。ここで力を入れる量やタイミングがバラバラになってしまうとうまく跳べず、動きがゴチャついてきます。
力を入れる方向とバランス保持が合っていないと、トランポリンから落ちてしまいます。
セロトニンの効果に期待
発達障害を持つお子さんと関わっていると、どこか落ち着かずソワソワしている子が多いです。
それには、ドーパミンの分泌が少なかったり多すぎたり、ノルアドレナリンが少なかったり多すぎたり、神経伝達物質の不均衡が原因の一つとして考えられています。
それら神経伝達物質の流れを整えてくれるのがセロトニンという物質です。
セロトニンは過剰に働いているドーパミンなどを働き過ぎないように抑えてくれる役割があります。
そしてセロトニンはトランポリンなどのリズム運動で分泌が促されます。
セロトニンが分泌されるまでに5分以上のリズム運動が必要と言われたり、持続時間は20分ほどと言われたり。どの程度の効果があるのかはまだまだ未知数ではありますが、私の働く事業所でもトランポリンを導入しており、トランポリン後は少し落ち着いているように思うこともあります。
さらにセロトニンにはドーパミンの働きを適正化させる役割があるので、運動の企画がスムーズにできたり、運動の修正が上手になることも期待できます。
ただただ真っ直ぐ跳び続けるだけでも足腰体幹をとても使います。高く跳ばなくても、低く跳んでいても、跳んでいるだけでエネルギーを使います。連続100回跳ぶだけでも結構な疲労感です。筋肉を使って、心拍数も上がります。
トランポリンで狙うポイント
跳ぶ方向によって微妙なレベルの身体の傾きに対して、首や体幹での立ち直りやバランス制御をすること。
跳躍と着地を繰り返し、それぞれタイミング良く身体の適切な箇所に力を入れる必要がある。
平面のトランポリンはネット通販で安く買えます。バランスボールの上でトランポリンすることも面白いです。
事例
トランポリンをひたすら跳んでもらうと、色々な変化が見られます。平面のトランポリンを自分の力だけで跳んでもらうと、初めは高く跳ぼうとしたり足をグーチョキパーしてみたり、色んな小細工をして遊ぶが、疲れやすい子はそれが持続しません。変に力が入りすぎていることが多く、フラフラとしています。
疲れてきて省エネモードで跳ぶと、変な力が抜けて良いタイミングで力が入るようになる。疲れている状態では大きくふらつかないように真っすぐ跳ぶ方向に最小限の力でコントロールできるようになってきます。
およそ100回を目標に跳んでもらうと、50回を超えた位からこのような変化が見られてきます。
頸部や体幹がグラグラしてバランスがとりにくい子には手を介助して跳んでもらう。自分の手で支えて上半身の重みを介助してあげると、肩や体幹の固定力が上手く出せるようになり、頸部・体幹のグラつきを抑えて跳べるようになります。その上で下肢の使い方を学んでもらいます。初めはグラつきが大きく、支えている手にガチガチに力が入っていますが、徐々にタイミング良く足に力を入れることが出来るようになり、体幹のグラつきも減ってきます。手に頼る力も少なくなり、介助して支える負担も少なくなる。多少のグラつきがあったとしても、自分でコントロールして姿勢を戻してこられるようになる。 ここまでの運動学習を上手く引き出して導いていくことが大事ですね。
まとめ
このように、発達障害を持つお子さんの運動発達において、トランポリンはとても大きな効果があり効率の良い活動です。ぜひ導入してみてください。
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