主に子供のADHDについて解説していきます。
注意欠陥多動性障害と呼ばれていましたが、現在は注意欠如多動性障害に変わっています。
Contents
ADHDとはどんな障害か
代表的な3つの特徴があります。
不注意
「集中力がない」
「忘れっぽい」
「片付けられない」
「物をよく無くす」
「逆に過集中することもある」など多動・多弁
「落ち着きがない」
「じっと座っていられない」
「バタバタ動き回る」
「非常によく喋る」
「静かにしていることが出来ない」など衝動性
「順番を待てない」
「気に入らないことがあると手が出る」
「人の話を聞かずに喋り始める」
これら3つの特徴が全て当てはまる場合もあれば、不注意だけが目立つ場合や、衝動的な行動が目立つ場合など、様々です。
- 落ち着きなく、授業中でも立ちあがってしまう。
- 身体を動かしていないと落ち着かない。
- すぐ乱暴を働く。
- 集中できない。気が散りやすい。
- 忘れ物が多い、物を無くすことが多い。
- 好きな事には過集中してしまう。切り替えが苦手。
- ルールを守ることが出来ず、周りとぶつかりやすい。
などの行動的な特徴がよく見られます。
ADHDの原因は?
周産期のトラブルや遺伝的要因
ADHDの原因は未だに解明されていません。
「遺伝や周産期のトラブルによる脳機能障害」説が有力とされています。
脳の前頭葉が働きにくいことによって、注意力を持続させることや衝動性を抑制することが困難になると考えられています。
前頭葉で働くためにはドーパミンが必要なのですが、ADHDではドーパミンの伝達が上手くいかずに前頭葉の働きが弱くなると考えられています。
親の育て方論は間違い
以前から、「親の育て方が悪い」「しつけが出来ていないから」と言われることが多かったです。今でも言われることがあるのではないでしょうか。それは間違いです。
近年は発達障害が注目されてきて研究が進んでいます。原因が分かれば薬剤の開発も進むでしょう。
ADHDと分かるのはいつ頃か?
1歳半健診
乳幼児健診は4カ月、1歳半(1歳6カ月)、3歳と、定められた健診が3回あります。
保健師さんから聞いたことがありますが、発達障害のほとんどが1歳半の健診で一度引っかかるそうです。その時には「様子を見ましょう」という事が多く、1歳半では診断がつかない場合がほとんどで、診断がつくのは3歳健診以降が多いそうです。
健診で見るポイントは色々ありますが、運動面、言語面、知能面などの成長をチェックします。
歩行や積み木、指差し、人のマネをするか、言語理解は出来ているか、意味のある言葉を話せるか(ワンワン、ブーブーなど個人差あり)など。
健診で引っかかる子とは?
1歳半だと、ほとんどの子が歩けるようになっています。
ADHDの子は、歩けない、言葉が出ない、抱っこを嫌がる、目が合わないなど、発達の遅れや特徴などで引っかかるでしょう。
しかし、1歳半という年齢です。個人差が大きいので、健診で引っかかったとはいえ「ADHDである」とは言えません。しばらく様子を見て、特徴がどう変化するのか、対人面での様子はどうかなどを見ていきます。3歳健診の頃にはある程度分かりやすくなるのではないでしょうか。
小学校に上がる前が多いですね。
その後はどうするのか?
私の勤めている施設に来られるお子さんは、大体が3歳から5歳の子が多いです。保育所に通う年少~年長までの子です。小学校1年生もたまに来られます。3歳未満で来られるお子さんは滅多にいません。
保育所に通うようになって他の子との違いが見えたり、トラブルが増えたり。
保育所の先生と相談して、役所や保健センターと相談して、小児科を受診して、診断をしてもらう。それから療育を受けるために施設を見学する。
私はこの段階でお子さんと出会います。
疑いがあれば相談しましょう
保育所の先生、役所の窓口、保健センターなど。
受診した方が良いのか、専門家から見てアドバイスをもらう事ができます。
ADHDの療育
療育のススメ
ADHDと診断されたら、専門の機関で療育を受けることをオススメします。
薬物療法もありますが、これは小児科で相談してください。
療育には、様々な方法があります。
- 環境調整
- コーチング
- ソーシャルスキルトレーニング(SST)
- ペアレントトレーニング
- 運動療法 など
まずは環境調整をします。本人が集中しやすい、落ち着きやすい環境を整えることが先決です。
その上で、様々な療育を重ねていきましょう。
運動療法のススメ
私は発達障害を持つお子さんに対して運動療法を提供しています。
なぜ運動なのか。
「発達性協調運動障害」(DCD=Developmental Coordination Disorder)というものがあります。一言で言うと「不器用さ」です。それも人並み外れて不器用です。
例えば、「ボタンを留められない」「鉛筆やはさみが上手く使えない」という手先の細かい作業だけではありません。
「よく転ぶ」「ボールを片手で前に投げられない」「ブランコに立って乗れない」「ケンケンが出来ない」など身体の動かし方全般を指します。
身体を動かす時、脳が指令を出しています。
指令を出すためにはどういう風に動かすのかを組み立てる必要があります。
組み立てるためには、運動したことによる感覚入力や記憶からの情報を統合することが不可欠です。
例えば、ボールをキャッチするためには…
- ボールの大きさ
- ボールの重さや材質
- 相手やボールとの距離感
- 飛んでくるスピード
などの情報をキャッチします。情報を受け取るためには、前庭覚、固有覚、視覚、触角、聴覚、など様々な器官を使っています。
それぞれの情報を記憶や経験なども含めて統合させることで、ボールをキャッチする身体の動かし方の指令を出します。
感覚統合療法などで良く言われている感覚のズレは、前庭覚や固有覚の情報が歪んで伝わっているか統合の際に不具合を生じさせているかということ。
また、感覚情報を身体とマッチングさせるためにはボディイメージが重要になります。
これらの不具合があることによって、「不器用さ」が生まれていると考えられます。
それでは運動療法で何が改善するのでしょうか。
単純に運動を繰り返し行うことでパフォーマンスは上がります。ケンケンを続けていればケンケン出来るようになるでしょう。しかしDCDを持つお子さんは獲得までに時間がかかります。
ADHDでは前頭葉の働きが弱いと言いました。前頭葉は運動企図を司っています。要は指令を出す所。
その働きが弱いと適切な運動企図は難しいでしょう。
適切に動けないということは、適切な感覚も入力されにくい状態であるということ。
そこで前頭葉の働きを高めるために、前頭葉に必要なドーパミンとノルアドレナリンの量を増やしていくことが必要になります。
ドーパミンとノルアドレナリンは注意システムの調整を主導しています。注意力が向上するということは、自分の身体に向ける注意も高まるということ。つまり運動の修正能力が向上します。
ドーパミンとノルアドレナリンは運動によって一時的に増えることがわかっています。
よく「運動後に落ち着いている」「宿題の合間にトランポリンを飛ぶと効率が良い」などと聞きますが、こういった理由があるのではないでしょうか。
薬物療法を行っているお子さんが来られています。薬の効果があるうちは集中して取り組むことができるため運動能力が向上します。薬の効果がなくなると、大幅にパフォーマンスが低下します。これも同様にドーパミンとノルアドレナリンの量が関係していると考えられます。
運動療法を行うことで神経伝達物質の量を増やして前頭葉機能を高めることが可能です。
運動をした数時間という一時的なものであるとは思いますが、確実に効果があります。
薬物療法と運動療法を組み合わせると効果は倍増するという意見もあります。
最後に
療育は早ければ早いほど効果が高いと言われます。
早めの相談で、早期療育を目指していきましょう。
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