発達障害は障害なのか、個性なのか。
よくある議論です。少し特性があるだけで障害という括りにしたくない、これはよく分かります。その人の持っているスキルや人柄の強みを活かせば、障害の有無に関わらずその人が出来る事は無限にあります。
色々な意見がありますので私見を交えてご紹介していきます。
Contents
障害派の意見
『発達障害は社会で暮らすからこそ障害だよ』と、どこかで耳にしたことがあります。
『例えばどこかの島で暮らしているのが1つの家族だけなら、発達障害という言葉はないでしょう。社会に出るから障害なのです。』
これはとても分かりやすい例え話です。
社会の中で生きていくならば、「個性」として理解される範囲を超えてしまうのではないでしょうか。人間は集団で暮してきました。集団の中で暮らすということは周りのペースに合わせることが必要です。
そして社会で生きていない人はいませんよね。
個性派の意見
障害は個性という意見です。
『記憶力のある人、忘れっぽい人。字の上手な人、苦手な人。運動が得意な人、不得意な人。このように沢山の特性がある。これだけで障害とそうでない人を分けることは出来ないでしょう。』
確かにそうですね。1つの障害を取り立てて「障害!」と区別してしまうことは危険かもしれません。誰しも必ず得意不得意を持っていて、完璧な人間はいませんから。
ところで自閉症スペクトラムの「スペクトラム」とは「連続体」という意味があります。できることできないことのデコボコがあるということなのですが、まさに得意・不得意のデコボコが当てはまると思いませんか?
中間派の意見
障害派と個性派の間です。どちらとも取れる解釈をします。
社会的に不具合があるならば障害と考えられるけど、個性として捉えてコントロールできるならばそれも良い。
誰しも得意・不得意を持っていて、強みとして活かせるところと、弱みとしてサポートが必要なところがあります。それがどのレベルなのか。強み・弱み、誰しもどちらの要素も持っています。
強みならばそれを活かして社会で活躍していける。例えばアメリカで社長をしている人にADHDを持つ人が多いなどと言われています。これはADHDの持つ『行動力』という強みを活かした活躍の仕方なのでしょう。
逆に弱みならばサポートが必要です。サポートは人にしてもらうだけでなく、物やツールを使うなど色々な形があります。例えば忘れっぽい人ならリマインダーやアラームを使う、お薬ポケットを使うなど。
自閉スペクトラム症であれば、SSTを受けたり、対人面の困難さを親身に教えてくれるような信頼できる人が身近にいることなど。
ちなみに私は中間派です。
私の結論
障害か個性か。私としては、結局はどちらでも良いです。
例えば【障害者は『害』ではないから、障害の『害』を『がい』にして障がい者と呼びましょう】それと同じような印象を受けてしまいます。
もちろん、その呼び方を悪く言うわけではありませんし、むしろ良いことと感じています。しかし実際に変化を伴わない言葉遊びになっていては意味は少ないです。
障害を持つ人も持たない人も助け合って生きていく。これが実現されると嬉しいですよね。言葉を変えることでそれが実現されるのでしょうか。結局は社会全体の意識を変えない限りは実現は難しいかもしれません。言葉を変えるのはきっかけになります。きっかけを上手く使いながら社会を変えていくためには積み重ねをしていくことですよね。
個性だとしても支援の必要性
誰しも得意・不得意を持っていて、出来る事・出来ない事があります。
everyone has disability -誰もが障害を持っている-
最終的にたどり着いたところはここでした。得意なところは活かして、不得意なところは助けてもらえば良いのです。皆そうやって生きてます。障害に関わらず、そういう社会になっていくと良いですね。
そして障害をお持ちの方、程度にもよりますが、いわゆる「個性的」である以上に、社会の中での「生きづらさ」といった困難さを抱えているでしょう。
この場合は特に、何らかの支援が必要になります。周りの信頼できる人や専門家に相談しましょう。
私が経験した事例
以前働いていたデイケアにいた介護職員の方のお話です。
30代後半。職を転々としながら介護業界に出会い、デイケアに入職される。
特徴を箇条書きでまとめると…
得意なところ | 不得意なところ |
・パソコンが得意 ・方向性を理解すると一直線に突き進んでいく行動力がある | ・指示に対して返事がない ・納得いかなければ行動しない ・忠告を聞き入れない ・モノの扱いが雑でよく壊す |
不得意な所が目立ってしまいますが、注目する点は得意なところです。
- 不得意なところにはサポートします。
- 返事がなくても声をかけ続けます。
- 納得しなくても角度を変えてアプローチします。
- 忠告を聞き入れなくても何度も声をかけ続けます。
- モノが壊れたら修理します。
かなりの量に対して目を瞑りますし、サポートし続けます。
逆に得意なところはどんどん活かして動いてもらいます。
- パソコンが得意なので書類関係を任せます。
- 利用者に配る案内や日誌のレイアウトなどの作成をしてもらいます。
任せた仕事は自信をもってしてもらえます。自信を持って出来た仕事は続きます。
不得意な事をすることも必要です。しかしそれを続けることは辛いことです。得意なことを活かしてもらえたらどんどん伸びていきます。
得意と個性を活かして不得意をカバーする
このように、得意なことを活かすことが出来れば不得意な部分をカバーすることが出来ます。しかし不得意な所も改善していかなければなりません。常に周りがカバーし続けることは不可能です。
特性を持ちつつ社会の中で暮らしていくためのスキルを学んでいくことが大切です。もちろん周りの理解やサポートも必要ですが、本人の意識を変えていくことも必要になる時がきます。
まとめ
障害であろうと個性であろうと、強みは活かし弱みには必要とされるサポートを受けましょう。
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